”いき”とゾロ
『ONE PIECE』で人気投票をすればロロノア・ゾロはトップ3位以内に入ります。
ゾロの人気の理由は何か?
その秘密は"いき"にあるかもしれません。
「いき」とは何か?
いきとは以下の3つの要素があるとされる。
- 意気地
- 諦め
- 媚態
意気地(いくじ)
武士道の精神のこと。
具体的に意気地とは、次のようなもの。
- やせがまん
- 見栄を張る
- ひもじくても満腹を装う
ゾロは瀕死の状態でも余裕を見せる。
決して相手に「弱さ」を見せない。
たとえ相手が格上でも、むしろ格上だからこそ勝負を挑む。
「準備してから…」などと考えない。
たとえば、世界最強の剣士ミホークに初めて会うなり、いきなり決闘を挑む。
(ミホーク)
「いっぱしの剣士であれば剣を交えるまでもなくおれとぬしの力の差を見抜けよう」
「このおれに刃をつきたてる勇気はおのれの心力か…
はたまた無知なるゆえか」
(ゾロ)
「おれの野望ゆえそして親友との約束のためだ」
漫画『ONE PIECE』6巻 第52話「誓い」より
ちなみに「いき」の漢字は「粋」ですが、これは「意気」から転じたもの。
心の張り
- 群れないこと
- または異性に依存しないこと
軟派でチャラくないということ。
ゾロは「堅物」。高校球児のように「硬派」。
ナミやロビンなどの異性に目をくれない。
諦め(あきらめ)
「あきらめ」は次のような様子を表します。
- 儚さ(はかなさ)
- 執着を離れているさま
「あきらめ」には「儚さ」がある。そして「儚さ」は美しさを生む。
たとえば「桜」。すぐに散るからこそ、そこに美しさがある。
ゾロは桜の如きいさぎよさがある。
あきらめは、執着を離れている様子。
ゾロは、最強の剣士になるという己の野望よりも船長であるルフィの夢を優先する(以下、詳述)。
自分の命よりも「価値」に重きを置く。これは意気地にも通底するところ。
執着まみれの政治家と違う。ここでの政治家は一応世界政府のとしておく。
(ゾロ)「災難ってモンは たたみかけるのが世の常だ
言い訳したら どなたか助けてくれんのか?
「死んだらおれはただそこまでの男……!!!」
漫画『ONE PIECE』50巻 第484話「ぷに」より
ゾロは死を前に怖がってジタバタしない。
(ゾロ)「背中の傷は剣士の恥だ」
漫画『ONE PIECE』6巻 第52話「誓い」より
媚態
媚態とは、色気のこと。
ゾロは、トレーニングシーンなどでは、筋肉を出し半裸のことが多い(笑)色気はあるはず…!
ちなみに昔の日本では、
- 「湯上がり姿」
- 縦縞(たてじま)の模様
に媚態があるとされていました。
ゾロはは縦縞のイメージじゃないでしょうか。
媚態を減じているとすれば「腹巻」か?
ちなみに腹巻をつけている理由は、
「ハラマキは日本の誇る最強防暖衣装にしてハイファッションナイスフィット戦闘着だという事をよくおぼえておけっ!」
サンジは「騎士道」
「いき」は、西洋の価値観である「合理性」や「生産性」とは違う価値観とされています。
西洋的といえば、麦わら海賊団のもう一人の戦闘員、サンジは「いき」か?
サンジも"いき"。サンジは、日本的な価値観の「いき」というより、西洋的な”紳士”、”騎士道”の方がイメージには近いといえます。サンジの魅力は、ゾロに比べれば西洋的な魅力といえます。
さいごに
最後にゾロの"いき"な場面を 。
漫画『ONE PIECE』50巻 第485話「麦わらの一味・海賊狩りのゾロ」より
(クマ)
「…………そんな野心がありながら…………この男に代わってお前は死ねると言うのか?」
(ゾロ)
「………そうするほか…今
一味を救う手立てがねェ…!!!」
「船長一人守れねェでてめェの野心もねェだろう」
「ルフィは海賊王になる男だ!!!」
「いき」な男です。
「麦わらの一味・海賊狩りのゾロ」(485話)というゾロの名前が冠された話が収録されている50巻は必見です。
参考:『「いき」の構造』 九鬼周造著